デート商法 ―不動産取引にかかる裁判例(4)

今回もRETIO(不動産適正取引推進機構)が公表している不動産取引にかかる裁判例についてお話ししていきたいと思います。

今回のお話は、「いわゆるデート商法によりマンション購入契約をさせられたとする買主の購入代金全額の損害賠償請求が容認された事例」です。

なんだか、コンプライアンスという言葉がまだ日本で言われていなかった時代に起こったタイトルのようですが、令和3年に判決が出た事件です。

どのような事案だったか簡単に説明します。

XはAからSNSでメッセージを受け取り、連絡するようになります。何度か食事をするようになった段階で、XはAから不動産投資の勧誘を受けます。そこに、Aの会社Y(宅建業者)の役員がでてきて、不動産投資の勧誘を受けます。結局、Xは3棟の投資物件を購入しますが、毎月10万円以上の赤字となったことから、XがYに対して買取を求めたところYから拒絶されので、裁判を行ったというものです。Xの購入した代金は7981万円だったのにに対して、裁判で出てきた市場価格は3760万円というものでした。

裁判では、Aの勧誘行為に対して、社会通念上容認し得る限度を超えた不法行為であったと言っていますので、どのような勧誘行為であったのか・・・・

Yについても、Aと共謀して投資物件を売ったと判断し、ほぼほぼ全額の損害賠償請求を認めています。

昔からある詐欺の手口ですね。何故、このような詐欺に引っかかるのだろうかと思いますが、理由は単純なものでしょう。色と金ですね。

RETIOが公表している文書からは、AとXどちらが男でどちらが女かわかりませんが、どちらであっても起こりうることです。恋愛という「色」に吊られて、「金」をぶら下げられてしまったのですね。

詐欺は人の弱いところ、本能的なところをついてきます。特に「色」と「金」は、誰もが手に入れたいと思うものでしょう。いまだにこのような不動産詐欺があることに驚きます。

けど、私が一番理解できないのは、金融機関がこの不動産取引に融資をしているということです。いったいどこの金融機関が、市場価値の2倍以上の不動産に融資をしたのでしょうか?いまだにそんなことをしている金融機関があるのかと思うと、以前銀行員だった私としては情けなくなります。 融資にこそ理性が必要です。融資判断は、投資の正しさを判断する最後の砦です。理性を亡くした融資は犯罪と同義だと私は思っています。