投資物件への住宅ローン利用ー不動産取引にかかる裁判例(3)

今回もRETIO(不動産適正取引推進機構)が公表している不動産取引にかかる裁判例についてお話ししていきたいと思います。

簡単にこの事件を説明すると、投資物件には利用できない住宅ローンで、不動産業者の言う通りに住宅ローンで投資物件の購入した後、資金使途相違の詐欺行為ということでローンの一括返済をしなければならなくなった。そのため、買主が、不動産業者を訴えて一部の損害賠償が認められたという事案です。

話の前提として、住宅ローンについて説明します。日本の住宅ローン(フラット35を含む)は、圧倒的に借り手に有利なローンです。正直、自宅を購入する場合、住宅ローンを利用しないのは損ではないかと個人的には思っています。理由は以下の通りです。

  • 金利が圧倒的に安い。いくら預金金利が0%だといっても、1%を切る融資金利は冷静に考えれば、ありえないことです。金融機関からすれば、粗利1%ですから利益を上げるのは大変です。
  • 購入不動産の価値以上の融資をしてくれる。現在は、不動産価格+諸費用まで融資してくれます。不動産の担保価値も販売価格を基本に評価しているようです。
  • 税金の優遇措置が多い。居住用不動産に関する税金は優遇措置がてんこ盛りです。
  • 融資条件が緩い。個人信用情報に問題がなければ、所得条件などの融資条件は緩く、できるだけ拾ってあげようという意図があります。

住宅取得は「国策」みたいのものなので、とにかく住宅の売買を活発にして、景気の底上げを図りたいという考えでしょう。

上記のように様々な面で優遇されている住宅ローンは投資物件の購入には利用できません。

さて今回の本題ですが、「不動産投資セミナー」などを入り口として、投資物件を購入していただくことはよくあることです。それは決して悪いことではなく、健全な投資であれば、世の中にどんどん広がっていく方がいいものです。

ここに必ずついてくるのが「詐欺」です。融資を受けやすい住宅ローンを利用して不動産を購入させます。利口な(悪徳な)業者は、不動産売買契約にもローンにも自分の名前を残しません。言葉巧みに融資を組ませ、収益性のない物件を購入させます。本当に悪徳な業者は証拠を残しません。

結果的に悪いのは騙された方だとなります。「ローン利用者が手続きを事業者に任せても、虚偽の内容で融資を受けることは詐欺行為になり、利用者自身が責任を問われます。」 悲しいことですが、この手の犯罪はなくなりません。必ず騙される方がいるからです。犯罪を減らすためには、より一層の健全な不動産投資市場とルールが形成されることが必要かもしれません。