『日本の歴史問題』

日本の歴史問題 改題新版

「帝国」の清算から靖国、慰安婦問題まで

波多野澄雄(著/文)

発行:中央公論新社

新書判 344ページ

定価 1,000円+税

書影:WEBサイト「版元ドットコム」より

突然ですが、皆さん「A級戦犯」の意味をご存じですか?

私は意味を知らず、その言葉のイメージからA級ということで、戦犯の中で最も重い罪を負った人だと思っていました。しかしそうではなく、戦争犯罪はその罪の種類でA級、B級、C級があることを知りました。A級とは「平和に対する罪」で、具体的には侵略戦争の計画・準備・遂行・共謀協議を行ったものです。C級とは、「人道に対する罪」としてナチスの残虐行為を対象としています。(日本にはC級犯罪は適用されていません。)B級をそれ以外の第2次大戦以前から定められている戦争犯罪(捕虜への弾圧など)を指します。

私は日本人に生まれ、学校でも社会でもいろんなところで日本の歴史を習ってきました。自分としてはそれなりに日本について知っているつもりでしたが、A級戦犯の意味さえ知らずにいたのです。

この本を手に取ったのは、この本の帯に書かれてある「なぜ戦後は終わらないのか」という問いが、以前からずっと私の心に引っかかっていたからです。

ドイツは、ナチスというとてつもない大きな十字架を背負っている国ですが、日本のようにいつまでも戦後を引きずっているようには見えません。戦争責任を果たさなければならない国としっかりとした関係を築いています。なぜ、ドイツは戦後が終わって日本の戦後は終わらないのか。日本の戦後が終わらないのは、終わらない理由があるからです。日本の立場からは、日本が戦争責任を果たしていないわけではありません。一方、被害を被った方から見た場合、日本が戦争責任を果たしたとはいえないものがあります。この本は双方の立場を冷静に説明してくれます。 このような話はどうしても感情が先に立ってなかなか冷静な話ができなくなります。しかし、この本は日本の戦争責任について中立的にかつ俯瞰して説明している大変良い本だと私は思います。日本が、国際社会の一員として将来に向けて進んでいくためには、過去をしっかりと理解していくことが第一歩となります。是非、この本を多くの方に読んでいただきたいと思い、今回のブックレビューに選びました