『満願』

米澤 穂信(著/文)
ISBN 978-4-10-301474-4   四六判 336頁
定価  1,600円+税
発行 新潮社
書店発売日 2014年3月20日

書影:WEBサイト「版元ドットコム」より

2014年『満願』で山本周五郎賞を受賞。同作は、「このミステリーがすごい!」「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」の国内部門ランキングにて1位に輝き、史上初の三冠を達成する。

出版元の新潮社のホームページにはこのように紹介されています。2014年この本は、どこの本屋に行っても平積されていました。 ずっと気になっていたのですが、手を付けずにいました。それは、私が推理(ミステリー)小説をあまり好まないからです。もしかしたら、ミステリー小説を小説のジャンルの中で少し低俗なものの類と差別的に見ていたのかもしれません。

中学生のころ、自宅にあったのでアガサクリスティーやエラリー・クイーンを読んでいたのですが、自分の読書力が足りないために、推理小説を読んでいても、自分のなかで推理にならないのです。淡々と読み進んでいくだけで、読みながら推理というものができなのです。そんなトラウマがあって、自分の読書力のなさを、推理小説(ミステリー小説)は低俗だと、勝手に理由をつけて避けていたのかもしれません。

この本を手に取り、読んでみました。作者の力量はすばらしく、文章、構成、ストーリーどれをとっても感心してしまいました。久しぶりに、しっかりとしたよい文章を読んだという気にさせてくれる本でした。

この満願という作品は、「謎」も「伏線」も「論理的回答」もしっかりとしています。ミステリーに重要な「娯楽性」も当然しっかりと満たしています。当然ミステリーの形式も満たしています。ミステリー小説3冠を獲得した作品で、万人が評価した作品です。

ただ私はこの本を読んだ後、すぐにこの本はミステリーなのだろうかと思いました。この満願という作品は、ミステリーという形式を用いて、人間の心の奥底に潜むドロッとした塊を描いた文学作品なのだな感じました。私の中ではミステリーの枠を超えているのですね。私がミステリー差別しているのかもしれませんし、古いイメージにとらわれたままなのかもしれません。

言いたいのは、この「満願」という作品はいい作品だということです。

ただ、最後に人の心の奥底にあるドロッとした塊がでてきますよ。(笑)