『ヤメ銀 銀行を飛び出すバンカー』
今回のブックレビューは、「ヤメ銀 銀行を飛び出すバンカー」です。
出版社の紹介では、
長らくエリート会社員の象徴でありながら、同時に「規制金利→金融自由化→バブル→バブル崩壊→金融再編→フィンテック登場」とめまぐるしく荒波に晒されてきた日本のバンカーたち。時代の変化に適応し、変異して、銀行を飛び出した「ヤメ銀」たちに聞いた「銀行でこそ学び得た経営の教訓」。と書かれています。
銀行で働いたことのない方がこの本に興味を示して売れたりするのか、元銀行員の私としてはよくわかりませんが、ヤメ銀シリーズがこの本で3冊目ということなので、それなりに需要があるのでしょう。
本の帯には「必要なことはすべて銀行で学んだ」と書かれています。が、はたしてそうでしょうか?私の先輩でその方もヤメ銀の方ですが、その方が「銀行は人を馬鹿にするところだ。」と言っていたのを思い出します。どういうことかというと、銀行は上からの指示に従う上意下達(ジョウイカタツ)の組織で、部下は言われたことだけを忠実に行うようになって、自分で物事を考えなくなりだんだんと馬鹿になる。ということです。
銀行は典型的な「ジャパニーズトラディショナルカンパニー(JTC)」で、加点評価ではなく原点評価の組織なのです。私が銀行になじめなかったのも(30年もお世話になりましたが。(笑))、このような体質が私には合わなかった気がします。周りの人は、黙って従っていたので、みんな大人だなあと、思っていました。
さて、私も銀行を出て畑の違う不動産業を始めて思うのですが、銀行は特殊な業界ではありません。それぞれの業種により、癖やルールがあります。特殊といえば不動産業の方が特殊だと思います。取り扱う商品により、専門化・細分化が図られています。このような本が出るというのは、銀行はいまだに、「特別なもの」「エリート」という目で見られているのでしょう。 久しぶりに、銀行業界の内輪の本を読んで、懐かしいにおいがしました。「ジャパニーズトラディショナルカンパニー(JTC)」という言葉は、少し皮肉が込められた言葉です。しかし、上意下達の組織運営が行われるのは、銀行が潰れない組織だからです。それは、とても幸せなことだと思います。
文春新書『ヤメ銀 銀行を飛び出すバンカー』
秋場 大輔(著/文) 発行:文藝春秋
新書判 重さ 200g 288ページ
定価 1,050円+税
書店発売日 2024年3月19日
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