賃借人の迷惑行為ー不動産取引にかかる裁判例(6)

今回もRETIO(不動産適正取引推進機構)が公表している不動産取引にかかる裁判例についてお話ししていきたいと思います。

今回の事例は、賃借人Yは貸人Xから再三の注意を受けたにもかかわらず、賃貸物件に居住するほかの賃借人が退去せざるを得ないまでに迷惑行為を行ったとして、賃貸借契約の解除及び明け渡しが認められた事案です。

この事案は、賃借人Yが理由もなく、夜中や明け方に他の部屋を訪問し、インターフォンを鳴らす、玄関のドアをたたく、玄関ドアを勝手に開けるなどした行為を繰り返し、他の入居者とトラブルを起こしていました。

賃貸人Xは賃借人Yに対して都度都度態度を改めるよう注意をしていましたが、賃借人Yの迷惑行為は改まらず、その結果、他の入居者はYの迷惑行為を理由に退去してしまいました。

このようなことが起こったので、賃貸人Xは賃借人Yに対して、貸借契約の解除及び明け渡しを求めました。

裁判で、賃貸人Xは賃借人Yに勝ったのは当然のことだと思います。今回、このような当たり前の判例を取り上げたのは、賃貸人のリスクについてお話ししたかったからです。

賃貸人Xは賃借人Yに対して訴訟(裁判)を起こさないと出て行ってもらえなかったので、仕方なく訴訟を起こしたはずです。変な賃借人が入居してしまうと賃貸人は大変な迷惑をこうむります。出て行ってもらうだけでも裁判を起こさなければならないのです。

普通なら、これだけの迷惑行為を起こしたのなら、出て行けと言って追い出せるのでしょう。しかし、相手がまともな人でない場合、裁判にまでなることが起こりえます。日本国は法治国家ですから、自力救済が禁止されています。(自力救済とは、何らかの権利を侵害された者が、司法手続によらず実力をもって権利回復を果たすことをいう。)

相手が出ていかない場合、法的な手続き以外で追い出すと、逆に犯罪になってしまいます。少し理不尽な気もしますが、自力救済を認めると、暴力団等がはびこる社会になってしまったり、力の強いものが有利な社会になってしまうから致し方ないものです。

私も賃貸住宅の入居者に迷惑をしたことがあります。私はアパートは持っていないのですが、私の家の横がアパートで、アパートに入居してきた人がでたらめな人でした。窓からたばこの吸い殻をまとめて捨てたり、カップラーメンの食べたカップをそのまま捨てたり。夜中、ベランダから、携帯電話をスピーカーにして大声で長時間しゃべるなどの行為を繰り返していました。文句を言ってやろうかと思いましたが、家族から止められてしまいました。結局半年くらいで出て行ったのですが、その間、大変迷惑をしていました。

自力救済はだめだということはわかりますが、裁判まで行わなくても解決できる方法が欲しいものです。

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