告知義務違反ー不動産取引にかかる裁判例(2)

今回もRETIO(不動産適正取引推進機構)が公表している不動産取引にかかる裁判例についてお話ししていきたいと思います。

今回は、売主の告知義務違反です。不動産の売買を行う場合、売主は物件の状況について正しく報告する必要があります。今回の判例事案は、売主がきちんと告知していないことから、売主に対する損害賠償請求が認められた事例です。

事案の概要は以下の通りです。

売買契約では、

① 契約違反による契約解除に関すること

②「本物件は築42年経過しており建物及び付属設備等は耐用年数を過ぎていて、屋根、躯体、建物構造部分、水道管、排水管、ガス管、電気配線等について相当自然損耗、経年劣化が確認され、いつ壊れてもおかしくない状態であります。」

③「本物件は中古の為、現状有姿でのお引き渡しとなり瑕疵担保責任及び付帯設備保証は免責とします。」

④「売主は対象不動産の隠れたる瑕疵について一切の責任を負わないものとします。」等が記載されており、現在の契約不適合責任についても明確に免責としていました。

しかし、売主は物件が随分老朽化しており、相応の補修が必要な物件であることを知っていました。また、雨漏りがおこっていることも知っていましたが、物件状況確認書には、現在雨漏りは確認していない。という文言にチェックを入れて買主に提出していました。

売主は物件の瑕疵を知っていたのですが、告知していないものでした。

今回、いろいろな予防線を張った契約書でしたが、虚偽があったため、賠償責任が認められたものです。

「物件状況確認書」は売主が自己の責任において記載するものとなっています。実務上、業者がサポートして作成する場合が多いと思いますが、それは作成に間違いがないよう行うものであり、物件の状況については、売主が最も知っていることだからです。

相続で取得し、その物件に住んだこともないということもあるかと思います。その場合は、積極的に「インスペクション」などを行い、売買にかかるリスクを取り除くことが大切です。

お互いが良い取引だったと思う売買が基本です。