『一次元の挿し木』
今回のブックレビューは、「一次元の挿し木」です。
二百年前の人骨のDNAが四年前に失踪した妹のものと一致!?
ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨。大学院で遺伝人類学を学ぶ悠がDNA鑑定にかけると、四年前に失踪した妹のものと一致した。不可解な鑑定結果から担当教授の石見崎に相談しようとするも、石見崎は何者かに殺害される。古人骨を発掘した調査員も襲われ、研究室からは古人骨が盗まれた。悠は妹の生死と、古人骨のDNAの真相を突き止めるべく動き出し、予測もつかない大きな企みに巻き込まれていく――。
以前から、本屋に平積みされていて、本の装飾がとても気に入っていました。手に取ってみるとこの本の帯でたくさんの方が褒めているので、興味を惹かれて読んでみることにしました。
「スケールが大きい陰謀劇であり、成長小説としての面白さも備えた作品。広げた風呂敷をきちんと畳み、物語の幕を閉じる技量に、自信を持って推す」川出正樹(書評家)といっている通り、きちんと伏線を回収していきます。礼儀正しいくらいの伏線回収です。文章力もしっかりしており、とても新人さんの作品とは思えない出来栄えです。
解説を読むと、ご本人はこの作品で「このミステリーがすごい」の大賞を取ることに自信を持っていたそうで「文庫グランプリ」となったことに落ち込んだそうです。
もともとは、作家名になろうと考えておらず、海外MBAを取得するために勉強していたそうですが、コロナでめどが立たなくなり、資金集めのために小説を書き始めたということですから、平凡な私から見ると驚くべきことです。
ところで、私はミステリーの定義がよくわからないところがあります。
ミステリーの種類は、ざっくり①推理小説:
犯人探しや事件解決を主なテーマとしたフィクション作品の総称と②神秘(Mystery):人間の理解を超えたような神秘的な出来事や、解明されていない現象そのもの2種類があるそうです。
この作品は、両方の要素を持っています。そういう意味でミステリーであること間違いないことなのですが、②の部分がSFとこんがらがってきます。この作品は、②の要素はどちらかというとSFの方が近いように感じます。
まあ、そんなことはどうでもよく、面白い一冊です。ぜひ手に取ってみてください。
宝島社文庫『一次元の挿し木』
著者:松下龍之介
発売日:2025年2月5日
価格:900円(税込)
ページ数:384P
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