『成瀬は天下を取りに行く』

今回のブックレビューは「成瀬は天下を取りに行く」です。この本は発売当初から売れましたし、本屋大賞も取って一時話題をさらったので皆様もご存じかと思います。今年6月に文庫になった時には(今でも)本屋にたくさん平積みされていました。

私も読みたいと思っていたので、今回の文庫化に合わせて読んでみました。

痛快な本です。青春です。面白い本です。

この本の主人公である「成瀬」は変わり者です。本の中でも変わり者であると書かれています。但し、本人は変わり者である意識はありません。成瀬の友人として登場する「島崎」は常識人であり、常識人である島崎が、成瀬の奔放な行動に巻き込まれながら、語り部としてこの物語を進めていきます。

僕は、「学生時代同じ教室に成瀬がいたら、僕は成瀬をどう見るだろうか。」と思いながら読んでいました。

成瀬が同じ教室にいれば間違いなく意識はするだろうと思います。だって、明らかに面白いキャラクターですから。けど、成瀬に近づこうとするかはわかりません。

同類と思われ、周りから浮いてしまうリスクもあるからです。物語の中で成瀬自身がそのような経験をしています。

高校生時代の僕が周りから浮くことに耐えられたかどうかは自信がありません。僕は成瀬のように強い意志を持っていない弱い人間だからです。意志の弱い自分と成瀬を比較しながら、さわやかな気持ちであっという間に読みました。

自分と本の主人公を比較しながら読むなど、はたしてこれまであったでしょうか。比較してしまうくらいに、私にとって成瀬というキャラクターが魅力的だということだと思います。

最後はどんなふうにまとめるのだろうかと想像しながら、気持ちよく裏切られて、一つ一つの話を心地よく読み終えることができました。

日頃は新書を読むことが多いのですが、今回、この本を読んで、「話題の小説を読むのもいいものだ。」と感じた次第です。

「成瀬は天下を取りに行く」
宮島未奈/著
新潮文庫 288頁
定価 693円(税込)
文庫版発売日:2025/06/25

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