『閔妃暗殺―朝鮮王朝末期の国母―』

今回のブックレビューは、「閔妃暗殺」です。

今年の初め、本屋を散策しているときに目に留まり買おうか買うまいか悩んでその時は買わなかったのですが、再度本屋で気になったので買った本です。
閔妃暗殺事件は韓国人にとっての“忠臣蔵”であり、韓国人は誰もが知っている事件です。しかし、日本人の多くはこの事件を知りません。日本の歴史教科書でも載せているものは少なくその記述も簡素なものです。
著者の角田房子さんは作品のプロローグで以下のように書いています。

「そこ(日韓関係の歴史)には日本にとっての“恥”の部分も出てくるであろう。それを調べるのは私にはつらいことだが、しかし目を背けてはならないと心に決めた。今のように無知のままでいることは、“臭いものにふた”の状態を続けることになる。その“ふた”の上に立って韓国の人と握手をしても、心は通じないであろう。」(カッコ内は私が補足)

私もその通りだと思います。

この作品は文芸作品としてみても、一級品です。私がとやかく言うことではなく、第一回新潮学芸賞を受賞していることからも明らかですし、ネットで本の評価を調べても高い評価を得ていることがすぐにわかります。1987年の発表時点ではベストセラーになったようです。著者は、中立的な立場を維持することに腐心して書いています。文芸作品であるにも拘らず、あいまいな点は断定せず、著者の判断根拠を示しています。硬質な文体で、感情的なものを極力排しているのですが、一気に作品の世界に引きずり込みます。久しぶりに引きずり込まれる作品に出会いました。著者の筆力がすごいからでしょう。

歴史は英語でhistoryです。語源は“彼の話”=王の話です。しかし今日の歴史は、彼の話ではありません。私の話でもあり、あなたの話でもあります。歴史は王の話から、みんな(共通)の話になってきたのです。これから、他の国の方と手を取り合えるのは、お互いがお互いのことをしっかりと知ることから始まるのだと思います。利害だとその時だけの関係になります。 読まれていない方は、是非一度この本を読んでみてください。お勧めいたします。

『閔妃暗殺―朝鮮王朝末期の国母―』
角田房子/著
ちくま学芸文庫
定価 1,760円
刊行日 2024/08/07
ページ数 512頁

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