『空と風と星と詩』

岩波書店の編集部からのメッセージを引用します。

「死ぬ日まで天をあおぎ
一点の恥じ入ることもないことを
葉あいにおきる風にすら
私は思いわずらった」

 このあまりにも有名な序詩で始まる詩集「空と風と星と詩」は,1948年,韓国で出版されるや,たちまちベストセラーとなりました.その純真な生き方,清冽な言葉が多くの人々を魅了したのです.
 いまや韓国では,教科書にも載せられ,誰でも知っている「国民的な詩人」「民族詩人」ですが,本人は,1945年2月,福岡の刑務所で27歳という若さで獄死し,自らの詩集を見ることさえできなかったのでした.
 そして京都の下宿先で逮捕された際,その後書きためてあった詩やノートはすべて押収され,その後どこからも見つかっていません.
 さらに,彼の最後に叫んだ言葉(朝鮮語)を,聞いた看守たちは意味を解しなかったといいます.
 彼の詩をひもとくときに,植民地支配をした側の私たちは,常にこうした事実を記憶しておく必要があります.
 彼は当初,そのなよやかな言葉のゆえに,抒情詩人として捉えられていました.しかし,訳者の金時鐘氏は,こう言います.
 「アジア侵略の「聖戦」完遂に故国朝鮮もが植民地の枷のなかでなだれているとき,ひとり使ってはならない言葉,母語の朝鮮語に執着し,時節にも時局にも関わりのない詩を自己への問いのように身もだえながら書きためていた学徒の詩人」である,と.
 日本の多くの若い人たちに,ぜひ手に取っていただきたい詩集です。

戦時中福岡の刑務所で亡くなったことを知ると、今福岡で生きている私には、彼の死がより現実的に感じられます。ただ、詩集を読んでも私の心に強く感じるものがありませんでした。そこで、なぜなのかを考えてみました。

  • 私がもう詩に感動することができなくなってしまった。
  • 詩は原語で読まなければその力が半減する。
  • この人の詩が私に合わなかった。

どれが正解かまじめに考えてみたのです。その結論として、きっと私が詩に感動することができなくなったのだと思います。悲しいかな、汚れちまった私に詩を感じる感性がなくなっていってるのでしょう。

『尹東柱詩集 空と風と星と詩』
尹 東柱 作、金 時鐘 編訳
岩波文庫(赤75-1)
刊行日 2012年10月16日
文庫版、186頁

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