『菜食主義者』
今回のブックレビューは、「菜食主義者」です。
この本の出版社であるCUONのホームページでは『「新しい韓国文学シリーズ」第1作としてお届けするのは、韓国で最も権威ある文学賞といわれている李箱(イ・サン)文学賞を受賞した女性作家、ハン・ガンの『菜食主義者』。韓国国内では、「これまでハン・ガンが一貫して描いてきた欲望、死、存在論などの問題が、この作品に凝縮され、見事に開花した」と高い評価を得た、ハン・ガンの代表作です。』と紹介されています。
韓国ドラマを見ることがあっても、韓国の文学にはなじみがないので小説を読むことはありませんでした。今回、ハン・ガンさんのノーベル文学賞の受賞で知ってから気になっていたので、初めて手に取ってみました。
本作品は、2016年「マン・ブッカ―国際賞」、韓国最高峰の文学賞である「李箱(イサン)文学賞」を受賞している作品ですし、2024年のノーベル文学賞を受賞した方の代表作ですので、私のようなものがとやかく批評することもおこがましいと思います。しかし、一応ブックレビューなのでコメントを言わせていただきます。私は読んでいるときから大江健三郎の「死者の奢り」と市川沙央の「ハンチバック」にどこか本質的なところで共通するような感覚を受けました。私には語彙力や表現力がないのでこの共通する感覚を言葉では表現できないのです。
この作品は、日本でいうなら純文学に分類される作品ですから、ベストセラー的な世間受けはしないと思います。また、楽しい内容かと言われると決して楽しい話ではありません。しかし、日頃はあまり小説を読まない私ですが、読みだすとこの作品に一気に引き込まれていきました。3篇の中編小説が連作となって一つの長編小説となっています。それぞれの中編小説では異なった3人の視線を通して物語が語られていきます。「ヨンヘ」という女性が肉を食べられなくなってしまい、「菜食主義者」になってから引き起こされる物語です。作品名は菜食主義者ですが、何かの思想をもって肉を食べない菜食主義者ではありません。肉を食べられなくなったのです。この話の行きつくところ、「生と死への自由」なのかもしれません。私が書いたところで、うまく説明できないのでネタバレにもならないとは思いますが、詳細については読んでいただければと思います。
韓国ドラマが人気を博しているのは、その土台となる原作がしっかりしているからだと思います。これを機に、今後は韓国文学にも触れていきたいと思います。
なお、出版元であるCUONは、『いまだ日本語圏の人々が見知らぬ奥深い韓国文化を、韓国においては韓国圏の人々にまだ知られていない、紹介されていない日本文化を伝えるべく、日本における韓国紹介サイトの老舗「韓国.com」を有し培ってきた経験に基づき、書籍をはじめとする互いの“知”を交わす事業を展開する会社』です。このような活動を通じて、日本と韓国との交流が深まることを望みます。
新しい韓国の文学シリーズ 『菜食主義者』
ハン・ガン(著) きむ ふな(訳)
発行:クオン 四六判 304ページ
定価 2,200円+税 書店発売日2011年5月25日
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