賃借人の死亡について

建物を賃貸しているアパートで、賃借人が亡くなった場合、損害賠償はどの程度してもらえるのでしょうか。

死亡の原因がいわゆる「自殺」(自死)の場合はある程度の判例があるようです。

まず、自死は契約義務違反になります。どのような契約義務違反かというと、賃借人の「善良な管理者の注意をもって補完する義務に対する違反」(善管注意義務違反)となります。賃借人は、借りている部屋をきちんと管理する責任があるのに、自死によって義務を履行していないということになります。契約違反なので「原状回復費用」と「損害賠償請求」が認められることになります。

具体的にどの程度の請求が認められるかは、自死によって原状回復費用がどの程度かかるか、あるいは自死がマスコミに取り上げられるような事件性があるもので広く世間に広まったとかなど、個別の状況によるので一概には言えません。

現在、アパートなどの賃貸借では保証会社が保証を行うことが一般的です。保証会社が保証する範囲としては「原状回復費用」と「損害賠償請求」の合計で賃料の2年分となっています。賃料2年分が最大と考えても間違いではないと思います。

では、「自死」ではない「自然死」の場合はどうでしょうか?

「自然死」はそれこそ自然なことですので契約義務違反になるようなものではありません。死なない人はいないので死んだこと自体が問題ということはなりません。

しかし、お部屋で亡くなって、発見が遅れたことにより救急車が来たり、警察が来たりして周りが知るようになった。あるいは傷んで周囲ににおいが発生して原状回復にも特殊清掃が必要となった場合はどうでしょうか。

このような場合でも多くの保証会社の保証は賃料の最大2年分となっています。しかし、自死とは異なりますので、損害賠償部分の額が自死とは異なることになると思われます。最大が2年分ですので、保証の範囲はそれより低くなる可能性が考えられます。

国土交通省では、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を発表しています。

これは、当該不動産で人の死があった場合に、宅地建物取引業者が借りる方あるいは買う方に対する告知のガイドラインを示したものです。保証の範囲等については示したものではありません。 確かに死について心理的な嫌悪感はあると思います。個人的な意見ですが、人が死ぬということは自然の摂理ですから、過剰にナーバスになる必要はないのではと思います。過剰になると、お年寄りがお部屋を借りようとしても借りづらくなってしまいます。それはそれで問題だと思います。

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